エジプトからみたアフリカの歴史|年表でわかりやすく整理!

古代エジプトといえば、ピラミッドやファラオといった華やかなイメージが強く、世界史でもよく取り上げられます。

 

でも実は、そのエジプトが栄えていた同じ時代、アフリカ大陸の他の地域でも、それぞれの土地に根ざした文化や社会がしっかりと育まれていたんです。しかも、そうした地域の中には、のちに巨大な王国を築いた場所も少なくありません。

 

この記事では、エジプトが特定の歴史的出来事を迎えていた頃、アフリカの他の場所ではどんな動きがあったのかを紐解いていきます。

 

例えば、

 

  • エジプトがピラミッドを建てていた頃、西アフリカやヌビアではどんな社会が広がっていたのか?
  • エジプトが衰退期にあった時、南のクシュ王国やサハラ以南の文化はどう変化していたのか?

 

そんな“同時進行で進んでいたアフリカのもうひとつの歴史”に目を向けてみましょう。

 

 

ピラミッド時代のエジプトと、南の大地で芽吹く文化

紀元前2500年ごろ、エジプトではギザのピラミッドをはじめとする巨大建造物が次々と建設されていました。王権が強くて、官僚制度や宗教体系もすでに整っていたんです。この頃のエジプトはまさに「世界の最先端」と言ってもいいくらいの文明国でした。

 

でもそれって、アフリカの他の場所では“文明”がなかったってことなんでしょうか?実はそんなことないんです。

 

サハラ以南に広がっていた暮らしの知恵

エジプトのような石造建築や文字こそなかったものの、サハラの南ではすでに農耕や牧畜を中心にした社会が広がっていました。特に西アフリカでは、ヤムイモやアブラヤシといった作物を利用しながら、定住生活を営む人びとが増えていきました。

 

土器と集落が語る“もうひとつの古代”

今のナイジェリアあたりでは、のちに登場するノク文化の前段階とされるような土器の痕跡も見つかっています。土器って、その時代の食生活や交易の痕跡を知るうえでとっても重要なんですよ。エジプトのように「見た目で圧倒される文明」とはまた違うけれど、生活に根ざした知恵が積み重ねられていたんですね。

 

 

エジプトが外敵に苦しんでいた頃、台頭していたクシュの力

スーダン・メロエの砂漠に立つ、古代クシュ王国王族の墓所であるピラミッド群

出典:Photo by Fabrizio Demartis / CC BY-SA 2.0より

 

紀元前1700年ごろ、エジプトはヒクソスという西アジア系の民族に支配されていました。首都メンフィスも陥落し、王権は弱体化。混乱と再編の時代を迎えていたんです。

 

でもそのタイミングで、南方のヌビア地域では新たな勢力が育ちつつありました。それが、のちのクシュ王国です。

 

クシュもピラミッドを建てていた

実はクシュの王たちも、ピラミッドを建てていたんです。形はエジプトのものよりも細長くて尖っていたけれど、宗教的な意味合いや王の権威を示す象徴としては同じ役割を持っていました。クシュの人々はエジプト文化を受け入れつつも、自分たちのスタイルで消化していたんです。

 

逆転!クシュがエジプトを支配した時代

時代が下ると、クシュはなんとエジプトを征服して「第25王朝」を築きました。ピイ王タハルカ王といったクシュ出身のファラオたちは、エジプトを再統一し、神殿の再建にも力を注ぎました。まさか南から来た王たちがエジプトを治めるとは、当時の人もびっくりしたでしょうね。

 

 

エジプトがローマに飲み込まれていた頃、西アフリカで育つ“黄金の基盤”

紀元後1世紀ごろ、エジプトはすでにローマ帝国の一部となっていました。クレオパトラの死をもって、プトレマイオス朝が終わり、ローマの属州として再編されたんです。

 

そんなエジプトの落ち着きをよそに、サハラ砂漠の彼方、西アフリカではまったく別のダイナミズムが芽生えていました。

 

交易がつなぐ、砂漠の向こうの世界

この頃、サハラを越えての交易が本格的に始まりつつありました。金や塩、象牙や奴隷といった物品が、北アフリカと西アフリカのあいだを行き来していたんです。この交流が、のちに登場するガーナ王国やマリ帝国の発展の土台になっていきました。

 

文字はなくても文化は残る、西アフリカの知恵

ガーナやマリでは、書き言葉は少なかったけれど、語り部「グリオ」が王の系譜や歴史を暗記して語り継いでいました。この口承文化は、後の時代までずっと続き、アフリカの歴史の“声”として大切にされてきました。書かれていないからといって、存在しなかったわけじゃないということですね。

 

1890年に描かれたセネガルのウォロフ族のグリオ

出典:Public domain via Wikimedia Commonsより

 

 

エジプトとアフリカ他地域の対比年表

時代・年代 エジプトの出来事 アフリカの他地域の出来事
前3000年頃 初期王朝時代
上下エジプトが統一される
サハラ以南では牧畜文化が発展(ナイジェリア北部やチャド周辺)
前2500年頃 古王国時代
ピラミッド建設が進む
ナイル川上流(現スーダン)でクシュ文化の原型が成立
前1500年頃 新王国時代
トトメス3世やアメンホテプ4世の治世
ヌビア地方にクシュ王国が成立し始める
前700年頃 エジプトがクシュ王国に征服される
第25王朝
メロエを中心にクシュ王国が栄える
1世紀 ローマ帝国の属州となる アクスム王国(エチオピア)が台頭
7世紀 イスラム帝国に征服される サヘル地域でガーナ王国が勢力拡大
13世紀 マムルーク朝が成立 マリ帝国が黄金期を迎える(マンサ・ムーサ時代)
16世紀 オスマン帝国の支配下に入る ソンガイ帝国が西アフリカで繁栄
19世紀 ムハンマド・アリー朝
近代化が進む
ズールー王国が南部アフリカで拡大
20世紀 イギリスの保護国→独立(1952年) 多くのアフリカ諸国が独立運動を展開し独立へ

 

エジプトが文明の花を咲かせていた頃、アフリカ大陸の他の場所でも、人々はそれぞれの知恵と工夫で生活を築き、やがては大きな社会へと発展していきました。
エジプトの歴史は確かにドラマチックだけど、それだけが“アフリカの歴史”じゃないんです。
この大陸全体で起きていた多様な歴史の動きに目を向けることで、私たちの知っている世界史がもっと奥深く、もっと立体的に見えてくるはずです。