
セシル=ローズの風刺画「アフリカをまたぐ巨人(The Rhodes Colossus)」を見たことがありますか?
ヨーロッパの紳士風の男が、大きく足を広げてアフリカ大陸をまたいでいる、あの有名なイラストです。この男こそが、イギリスの帝国主義者セシル・ローズ。そしてこの絵には、当時のヨーロッパの「帝国的野望」が、びっくりするほどストレートに描かれているんです。
ここではこの風刺画に込められた歴史的背景・意味・そして批判の視点まで、しっかり解説します。
1892年発表の風刺画『The Rhodes Colossus』
アフリカ大陸をまたぐセシル・ローズが帝国主義の象徴として描かれ「アフリカをまたぐ巨人」とも呼ばれる
出典:Edward Linley Sambourne / Public domainより
この風刺画は1892年にイギリスの雑誌『Punch(パンチ)』に掲載された一枚の挿絵です。
絵の中心にいるのが、セシル・ローズ。
彼は南アフリカで財を成した鉱山王であり、同時にケープ植民地の首相でもありました。そのローズが、片足を南アフリカのケープに、もう片足をエジプトのカイロに置いて、大地をまたぐように立っているんです。
背景には、彼が掲げた壮大な構想――「ケープからカイロまで鉄道で結ぶ」という大英帝国の夢が象徴されています。
この構想は、アフリカの南端から北端まで、イギリスの支配下で鉄道と電信網を貫通させようという超大規模な帝国計画。
つまり:
このルートをすべてイギリス領でつなぎ、一大帝国の回廊を作るという野望だったんです。
つまりこの絵は、イギリス帝国の支配がアフリカ大陸を貫く、という「帝国主義の視覚的シンボル」でもあるわけですね。
なぜ“巨人”として描かれているのかというと、ローズ自身がアフリカ全土を“ビジネスと支配の対象”としか見ていなかったから。そしてイギリス国内でも、彼の姿は帝国の英雄のように持ち上げられていたんです。
風刺画であるにもかかわらず、あの絵はどこか賞賛的にも見えます。それは当時の英国社会が帝国主義を“誇り”としていた時代の空気感を反映しているとも言えます。
でも、この「アフリカをまたぐ」という構図こそが、アフリカの土地と人々を無視した傲慢な支配の象徴として、現在では大きな批判の対象になっているんです。
当時のイギリス人たちはこの絵を進歩や文明の象徴として受け取ったかもしれません。でも今の視点から見ると、それは搾取、差別、植民地主義の縮図でもあります。
つまりこの絵は、今では「帝国主義批判の象徴」としても引用されることが多いんですね。
「アフリカをまたぐ巨人」は、帝国の夢を描いた一枚であると同時に、アフリカの人々がどれだけ無視されていたかを物語る証拠でもあります。風刺画って、当時の価値観が凝縮された“歴史の鏡”なんですね。