
「無政府状態(むせいふじょうたい)」って、なんだか物騒な言葉に聞こえますよね。ニュースで「アフリカの○○国は今、無政府状態に陥っています」なんて報じられると、
「政府がないってどういうこと?」
「そんな状態で国が回るの?」
って思っちゃうかもしれません。
でも、この“無政府状態”っていうのは、ただ政府の建物がなくなるとか、誰も大統領じゃないとか、そういう表面的な話じゃないんです。
ここでは、アフリカ情勢でしばしば問題になる「無政府状態」って何か、それが起きると社会がどうなるのかを、やさしく解説していきます!
無政府状態とは、かんたんに言えば―― 国の政府や行政の仕組みが機能していない状態のこと。
もうちょっと具体的に言うと:
つまり、「政府が存在しているか」よりも“機能しているかどうか”が重要なんですね。
アフリカのいくつかの国では、長い歴史の中で内戦・クーデター・外国の介入といった深刻な出来事がたびたび起こってきました。これらの要因が重なると、国家としての統治機能が大きく損なわれ、人々の暮らしが著しく不安定になることがあります。
その結果、中央政府の力が弱まり、一時的、または長期的に「無政府状態」と呼ばれる状況に陥った国も存在します。以下に、代表的な例をいくつか紹介します。
1991年に当時の政権が崩壊して以降、長い間にわたって中央政府が機能しない状況が続きました。首都モガディシュ以外の地域では、各地の軍閥やイスラム過激派などが勢力を拡大し、国全体がバラバラに統治されていたのです。国際社会の支援を受けて暫定政府が設立されても、安定には程遠い時期が長く続きました。
2011年、長年独裁体制を維持してきたカダフィ大佐が反政府勢力によって打倒されましたが、その後は新たな権力の空白が生まれ、国内が混乱します。西と東で異なる政府が成立し、「一つの国に二つの政府がある」といった異常事態が長く続きました。各地で武装勢力が独自に支配する地域も多く、現在でも完全な安定には至っていません。
この国では、政権の奪い合いや宗教を背景とした対立が続いてきました。クーデターの発生やイスラム系・キリスト教系民兵の衝突によって、首都バンギを除く多くの地域で中央政府の支配力が及ばない状況となり、人々が武装集団の統治下で暮らさざるを得ないこともあります。
どの国にも共通しているのは、政治の崩壊と、それに乗じた武力勢力による支配が入り混じっているという点です。国家としての制度が弱まると、混乱の中で力を持つのは「話し合い」ではなく「武器」になってしまうのです。
一言でいえば、「社会が“自己責任”になる」状態です。つまり――
たとえば、無政府状態だったソマリアでは、武装グループが“私設税金”を取る、海賊が外国の船を襲うなど、まさに「国家が機能しない」とこうなる、という典型例が見られました。
「じゃあ新しい政府をつくればいいじゃん」と思うかもしれませんが、 無政府状態に陥った国では、信頼や秩序が根こそぎ崩れているため、簡単に立て直せないんです。
その理由は:
そのため、再建には安全保障、政治合意、人道支援、教育、インフラ整備といった、 あらゆる分野の「一からの再構築」が必要になるんですね。
どんなに深い混乱に陥ってしまったとしても、そこから立ち直った国も、ちゃんと存在します。無政府状態になった国々でも、人々が平和を願い、努力を重ねることで、少しずつ社会の秩序や政府の機能を取り戻していったんです。
長らく混乱が続いていたソマリアでも、2012年に国際的な支援を受けて新たな連邦政府が誕生しました。この動きは、国内の対話や和解を後押しする大きな一歩となりました。特に首都モガディシュでは、少しずつですが治安が改善され、学校や病院といった公共サービスも再び動き出しています。まだ課題は多いですが、確かな回復の兆しが見えてきているのです。
西アフリカのリベリアでは、1989年から続いた凄惨な内戦が2003年についに終結。平和への道のりは決して平坦ではありませんでしたが、国連の平和維持活動や支援が大きな助けとなりました。そして何より象徴的だったのは、2006年にアフリカ初の女性大統領としてエレン・サーリーフ氏が誕生したこと。彼女のリーダーシップのもとで、国民が一致団結して復興を進め、リベリアは再び歩みを取り戻しました。
対話・和解・国際協力――これらがあれば、たとえ一度すべてを失ったとしても、「もう一度国家をつくり直す」ことはできるんです。過去に混乱を経験した国々の再生の歩みは、今まさに困難にある地域にとって、大きな希望の光になります。
アフリカで起きる「無政府状態」は、単なる政治の混乱ではなく、人々の命や暮らしそのものが揺らぐ非常事態です。でもそれは同時に、「どうやって国家を築き直すか」「社会の信頼をどう取り戻すか」という問いでもあります。混乱の中でも、再出発に挑む声があることを、忘れないでいたいですね。