アフリカの運河一覧|スエズ運河だけじゃない!

アフリカ大陸の“運河”というと、まず思い浮かぶのはあの有名なスエズ運河ですが、実はそれだけではありません。アフリカには古代から水路を活用した物流や灌漑の工夫があり、現代でも各地で運河が重要な役割を担っています。特に「内陸国の多さ」「水資源の偏在」といったアフリカ独特の地理的背景が、運河の必要性を高めてきたんです。

 

ここでは、そんなアフリカにある代表的な運河の一覧を紹介しながら、それぞれの役割・歴史・地政学的意義を解説していきます。

 

 

スエズ運河(エジプト)|アフリカと世界をつなぐ“海上の要衝”

  • 所在国:エジプト
  • 開通年:1869年
  • 全長:約193km
  • 主な用途:地中海と紅海を結ぶ国際海運ルート
 

アフリカ最大にして世界的に最も重要な運河がスエズ運河です。この水路が完成したことで、ヨーロッパとアジアの間の航路が一気に短縮され、アフリカ南端の喜望峰をぐるっと回る必要がなくなりました。

 

この運河の開通は、世界の物流の流れを変えた大事件であり、エジプトの地政学的重要性を一気に高めるきっかけにもなりました。現在もエジプトの国家収入の大きな柱となっており、2021年の「スエズ運河座礁事故」で世界経済が混乱したのは記憶に新しいところです。

 

ジュバ運河(南スーダン)|ナイル川流域の水利用をめぐる“未完の計画”

  • 所在国:南スーダン
  • 計画開始年:1970年代(未完成)
  • 全長:約360km(予定)
  • 主な用途:ナイル川の水量確保、湿地バイパス、水利調整
 

ジュバ運河は、南スーダンの巨大な湿地「スッド地域」を回避し、ナイル川の水量をより効率的に下流へ送るために計画された人工水路です。ただし、工事は1980年代の内戦で中断され、現在に至るまで完全には完成していません

 

この運河はエジプト・スーダン・南スーダンの“水をめぐる利害関係”が絡む非常にセンシティブな案件で、今もなお復活や中止をめぐって政治的な議論が続いています。もし完成すれば、ナイル川の流量と水利配分に大きな影響を与えることになるでしょう。

 

 

リンガ運河(マリ)|内陸国の命綱を支える“小さな運河”

  • 所在国:マリ
  • 開通年:不明(伝統的水路)
  • 全長:数km規模
  • 主な用途:灌漑、農業用水、地域交通(小舟・牛車)
 

アフリカ西部の内陸国マリには、ニジェール川に沿った複数の小規模運河が存在し、中でもリンガ運河は農業と交通の両面で地域を支える重要な水路です。

 

特に乾季には、河川の水をコントロールして米や野菜の灌漑に利用されており、数千年にわたって続く伝統的な農業文化の基盤となっています。物流インフラとしての機能もあり、牛車や小舟での物資移動が今も日常的に行われています。

 

マグリブ地域の古代水路(チュニジア・アルジェリアなど)|ローマ時代の水の知恵

  • 所在国:チュニジア、アルジェリアなど
  • 開通年:紀元前1世紀〜中世
  • 全長:都市ごとに異なる(アクアダクト含む)
  • 主な用途:都市給水、農業灌漑(ローマ時代の技術遺産)
 

アフリカ北部のマグリブ地域には、古代ローマ時代からアクアダクト(導水路)や水路網が発達していました。とくにチュニジアのカルタゴや、アルジェリアのティムガッド遺跡などには今も遺構が残されていて、古代の運河技術の高さを感じることができます。

 

これらは現代の運河とは少し違いますが、都市への飲料水供給や農業の灌漑に使われ、地域の人口集中を可能にしたという点では、アフリカにおける“運河文化”の始まりとも言える存在です。

 

スエズ運河のような世界的な航路から、地域の暮らしを支える地味だけど大切な水路まで、アフリカの運河は多様で、そしてどれも“人と水をどうつなぐか”という課題に向き合ってきました。こうした水の流れをたどっていくと、大陸の歴史や未来の姿も自然と見えてくる気がします。