
アフリカ大陸といえばサバンナや砂漠のイメージが強いかもしれませんが、実は山脈も豊富に存在しています。それも、ただ高いだけじゃなくて、気候を変え、人の暮らしに影響し、神話や歴史の舞台にもなるような地理的にも文化的にも重要な存在なんです。
この記事では、アフリカにある代表的な山脈を一覧で紹介しながら、それぞれが持つ地理的特徴・気候への影響・文化的な役割まで、深掘りして解説していきます。
アトラス山脈は、アフリカ大陸で最も長い山脈。モロッコ・アルジェリア・チュニジアをまたいで約2,500kmにわたって連なっています。
この山脈はサハラ砂漠と地中海性気候の緩衝帯のような存在で、北側は温暖で農業に適した土地、南側は乾燥地帯と、気候の境目を作っています。また、山間部ではアマジグ(ベルベル)と呼ばれる民族が古くから生活していて、独自の言語や文化を維持しています。
文化的にも神話的にも象徴性が強く、ギリシャ神話の“天空を支える巨人アトラス”の語源になった場所とされるのもこの山脈です。
ドラケンスバーグ山脈は、南アフリカ共和国からレソトにかけて広がる山脈で、標高は3,000m級の山々が連なります。名前はオランダ語で「竜の山(Dragon’s Mountain)」という意味。
この山脈は南アフリカの水源地として非常に重要で、山から流れ出す河川が農業・都市用水を支えています。また標高が高いため、周辺より気温が低く、植生や生態系も独特で、ユネスコの世界遺産にも登録されています。
山中にはサン人による壁画や神話伝承も残っていて、自然と信仰が結びついた文化の痕跡が色濃く残っています。
エチオピア高原は、山脈というより広大な山岳地帯ですが、標高は平均2,000〜3,000mと非常に高く、「アフリカの屋根」とも称されます。
この高原地帯はアフリカでも珍しいキリスト教文化圏で、12世紀には岩をくり抜いて作られた教会群(ラリベラの教会など)が建てられ、今でも巡礼地として多くの信者を集めています。また、標高が高いため気候が涼しく、高地農業が盛んなことも特徴。
エチオピアという国が植民地化を免れた稀有な存在になった背景には、この地形の“守られ感”も一因としてあったと考えられています。
ケニアやエチオピアなどを縦断するグレート・リフト・バレー(大地溝帯)は、地球の地殻が引き裂かれてできた巨大な亀裂地帯。その縁にはアバーデア山地やケニア山といった山々が並んでいます。
この地形はアフリカでも非常に地質学的にユニークで、火山、湖、温泉なども多く存在。ケニア山(5,199m)はキリマンジャロに次いでアフリカで2番目に高い山で、神聖な山として崇められています。
周辺は水資源や生物多様性の宝庫であり、また農業地帯としても重要なエリア。登山やエコツーリズムでも人気のスポットとなっています。
ホグガール山地はアルジェリアの中央部、まさにサハラ砂漠のど真ん中にそびえる山岳地帯で、最高峰のタハト山は約3,000m。火山起源の岩山が連なるこのエリアは、まるで別の惑星のような風景をつくり出しています。
この地域にはトゥアレグ族という遊牧民が住んでいて、彼らの神話や伝承の中でもホグガールは霊的な意味を持つ聖なる場所とされています。雨が非常に少ない中でも、この山地に溜まる水がわずかな緑を育て、命をつないでいるという意味でも、サハラの中の“オアシスの象徴”のような存在なんですね。
アフリカの山脈って、ただ高いだけじゃなくて、気候を変えたり、文化や宗教の拠点になっていたり、あるいは民族のアイデンティティと結びついていたりします。地形の話を通して、その土地の“人間ドラマ”まで見えてくる――地理って、本当におもしろいですよね。