
アフリカの農村を上空から見ると、ところどころに丸く焼けたような跡が点在しているのがわかります。これは「山火事」ではなく、ちゃんと計画的に行われている農業の一環――そう、焼畑農業なんです。
でも「焼くって環境に悪いんじゃないの?」と思う方も多いはず。実際には、地域の自然条件や社会構造と深く結びついた暮らしの知恵でもあるんですよ。
ここでは、アフリカで焼畑農業がさかんな理由、そしてそれが環境や社会に与える影響について、わかりやすくご紹介します!
マダガスカルで撮影された焼畑農業の様子
出典: Photo by Leonora Enking / CC BY-SA 2.0より
焼畑農業とは、森や草原を切り開き、植物を焼いて灰にした後、その灰を肥料として利用して作物を育てる農法のこと。
アフリカでは特に熱帯雨林地域(コンゴ盆地や西アフリカ内陸部、マダガスカルなど)でよく行われています。
理由はシンプルで、「土があまり肥えていない」から。
熱帯の土壌って、見た目は緑豊かでも、実は栄養分が雨で流されやすくてやせているんです。
そこで――
ということで、「土地を育てる」のではなく「土地を移動しながら使う」という考え方の農業なんですね。
マダガスカル西部モロンダバで撮影された、焼畑後にトウモロコシが植えられた農地の様子。
出典: Photo by Frank Vassen / CC BY 2.0より
焼畑では、キャッサバ、ヤムイモ、トウモロコシ、バナナ(プランテン)などの根菜・穀物系が多く育てられています。 これらはすべてローカルな主食。つまり、自給用の作物がメインです。
焼いた土地は、2〜3年で作物を育て、その後はまた森に戻すという“回転式”のスタイル。その間に別の場所を焼いて、新しい畑にしていく。これを移動耕作と呼びます。
国名 | 主な地域 | 備考 |
---|---|---|
コンゴ民主共和国 | コンゴ盆地全域 | 熱帯雨林地帯で伝統的に焼畑が行われ、キャッサバやヤムイモを栽培 |
カメルーン | 南部・東部 | 森林伐採と焼畑を組み合わせた農業が一般的 |
ナイジェリア | 南部から中部 | 小規模農家が自給自足のために焼畑を行う |
ガーナ | 森林地帯(アシャンティ地方など) | 伝統農法として広まり、サトウキビやトウモロコシの栽培に用いられる |
マダガスカル | 東部の森林地帯 | 「タヴィ」と呼ばれる焼畑農業が主流で、米や野菜が作られる |
モザンビーク | ザンベジ川流域など | 焼畑によるトウモロコシやソルガム栽培が多い |
中央アフリカ共和国 | 森林地帯・サバナ境界部 | 移動式焼畑による農地利用が主流 |
アフリカにおいて焼畑は、単なる農法じゃなくて、生活のリズムそのものに根ざしています。
たとえば――
つまり、焼畑は自然と人のつながりを維持する仕組みでもあるんですね。
「焼く=森林破壊」と思われがちですが、伝統的な焼畑は意外と自然に優しい面もあるんです。
なぜなら――
ただしこれはあくまで人口が少なかった時代の話。
近年は人口増加によって、回復期間を待たずに次の焼畑に移るケースが増え、森林破壊や生態系へのダメージが大きな問題になっています。
近年では、こうした状況に対応するために――
などの取り組みが始まっています。
でも大切なのは、焼畑を単なる“問題”として切り捨てるのではなく、そこにある知恵や文化を尊重しつつ、持続可能な形へとアップデートしていくことなんです。
アフリカの焼畑農業は、「焼くこと」で自然を壊すのではなく、「焼くこと」で自然と生きていくための知恵でした。けれど今、その知恵と現代の課題がぶつかっています。だからこそ、未来を見すえた農業のカタチを、一緒に考えるタイミングが来ているのかもしれませんね。